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-在る世の物語-

此岸に呱呱の声をあげて、この穢土に愛育された人の話。
濁世に躄りながらも強かに生き、掴んだ小さいけど幸せな生活。

しかしその幸せも長くは続きませんでした。

哀れなくらい純粋でとても世渡りが下手な人は、悪い人に騙されて全てを失ってしまいました。
家も家族も愛する人も失った人、残ったのは燃えるような怒りだけでした。

-在る者は罪を犯す-

彼は怒りに身を任せ、全てを奪っていった人を殺しました。
最初はいい気分でしたが次第に罪の重さに気付きました。

告発者は告げます
貴方が殺した人にも、愛する人や家族が居るでしょう。
貴方に如何な理由があれ、それを奪った罪は消えません。

だけど私は貴方を裁きません、ただ罪を語るだけです。

断罪者は裁きます
貴方は私の大切な人を殺しました。
そこに如何な理由があれ、私は貴方を殺します。

たとえ私が罪を背負おうとも、ただ罪を裁くだけです。

観測者は見ます
人々は沢山の罪を犯します。
そこに如何な理由があれ、罪は消えないでしょう。

でも私は何もしません、ただ罪を見ているだけです。

 

「罪鎖る衆愚の黒業は済度儚き輪転の咎」